5月になると必ず思い出す詩があります。佐藤春夫の「望郷五月歌」です。
「塵まみれなる街路樹に 哀れなる皐月来にけり 石だたみ都大路を歩みつつ 恋いしきや何ぞわが古里
あさもよしむろの海山 夏みかんたわわに実り 橘の花咲く野辺に とよもして啼くほととぎす・・・・・・・」長い詩で最後に「贈らばや 都の子らに」で終わるのです。谷崎潤一郎婦人千代に対する同情心がやがて恋心に変わり、所謂(夫人譲渡問題」となって十年の歳月を経て、結婚したのです。その後東京の住まいでちよ夫人とその子供と住んでいる時に創った詩が「哀れ秋風よ!」の「さんまの詩」になったのです。東京での過酷な生活の中で故郷の紀州・新宮の海や山を心の糧に詩人、作家、評論家として膨大な作品を遺した偉大な文学者に敬意を感じます。
高校の時に習ったのでしょうか、なぜか忘れられない詩です。